「葉酸」は妊活中や妊娠中の方にとって、馴染みのある栄養素のひとつです。
胎児の脳や脊髄の発達にとって必要な成分だからです。医師からサプリメントの摂取を勧められる場合も多いでしょう。
葉酸のサプリメントにはたくさんの種類があり、その特徴も様々です。どのサプリを選べばいいか、迷った経験のある方も多いのではないでしょうか?
実は、葉酸には妊娠の時期に応じて1日に取るべき必要な量が変わります。
今回は、そんな葉酸の基礎知識と、摂取することによる効果、サプリメントの選びかたを解説します。
葉酸の基礎知識
葉酸とは、水溶性ビタミンであるビタミンB群の一種です。ほうれん草の抽出物から発見されたことが「葉酸」という名前の由来となっています。
実際はほうれん草だけでなく、その他の野菜や動物性食品にも含まれています。
葉酸には胎児の先天異常を予防する効果があり、妊娠を考えている女性や授乳中の女性にとって、特に重要な栄養素となります。
葉酸には、以下の2つの種類があります。
- ポリグルタミン酸型葉酸
- モノグルタミン酸型葉酸
あまり聞きなれない言葉ですが、葉酸の特徴を知る上でのポイントになってきます。それぞれを解説していきます。
ポリグルタミン酸型葉酸の特徴
ポリグルタミン酸型葉酸は「天然葉酸」とも呼ばれ、主に食品に含まれています。
多くの食品から摂取することができますが、特に次のような食品に多く含まれています。
- 焼きのり
- レバー
- 枝豆
- ブロッコリー
- ほうれん草
- 切り干し大根
- 鶏卵
- チーズ
- ヨーグルト
- 納豆
- 玉露茶 など
これらの食品を摂取すると、体内で消化酵素によりモノグルタミン葉酸に変換され、小腸から吸収されます。
その過程で約半分に減少するため、摂取効率は50%ほどといわれています。
また、葉酸は水溶性ビタミンであると同時に熱に弱く、食品を加熱する調理の過程で大幅に減少してしまいます。
通常時は食品からの摂取で足りていても、必要な葉酸の量が増える妊活中や妊娠中は不足しがちになってしまいます。
そのため、十分な葉酸を摂取するには、食材の調理方法や選び方を工夫するか、葉酸サプリの摂取が必要になってきます。
モノグルタミン酸型葉酸の特徴
一方、モノグルタミン葉酸は「合成葉酸」と呼ばれています。葉酸のサプリメントの多くには、このモノグルタミン酸型葉酸が含まれています。
ポリグルタミン酸型葉酸のように体内で変換されずにそのまま吸収されるので、体内での利用効率は約85%といわれています。
つまり、葉酸サプリを利用すれば、食事で摂取するよりも効率よく葉酸を体に取り入れることができます。
葉酸のはたらき
では次に、葉酸が体内でどのような働きをしているかみていきましょう。
体内に吸収された葉酸は、主に次のような役割を担っています。
- 胎児の神経管閉鎖障害リスクを減らす
- DNAの合成をサポート
- 正常な赤血球を作る
- アミノ酸の代謝
ひとつずつ具体的に解説します。
胎児の神経管閉鎖障害リスクを減らす
妊活中や妊娠中に葉酸が推奨される大きな理由のひとつが、胎児の神経管閉鎖障害リスクを減らすことがわかっているからです。
胎児の脳や脊髄のもとになる神経管は、妊娠6週ごろに完成します。神経管閉鎖障害とは、神経管の一部がうまく閉じなかったためにおこる病気のことです。
神経管閉鎖障害の中には、脳の形成を阻害して死産・流産などを引き起こす「無脳症」や、下肢の運動障害をもたらす「二分脊椎」などがあります。どれも非常に重大な病気です。
妊娠前から十分な量の葉酸を摂取すると、神経管閉鎖障害の発生リスクを減らすことができます。
DNAの合成をサポートする
葉酸は、DNAの合成にも関わっています。
DNAとは、体の各細胞の中に存在する遺伝子の本体、体の設計図のことです。細胞分裂して細胞が増える際に、DNAもコピーされて増えていきます。
DNAの情報を正確にコピーするためには、DNAが正しく合成される必要があります。
葉酸は、このDNA合成や修復のサポートをしています。体の臓器や組織の細胞分裂が活発な時期には特に大事な栄養素となります。
正常な赤血球を作る
葉酸には赤血球を正常に作る働きもあり、「造血のビタミン」とも呼ばれています。
赤血球はご存知の方も多い血液中の細胞の一つです。ヘモグロビンというタンパク質に酸素を結合させて、全身の細胞に酸素を運ぶ大事な仕事をしています。
赤血球の寿命は約4ヶ月で、不足しないように常に新しい細胞が作られています。
葉酸は、ビタミンB12とともに赤血球を作り出す重要な役割を担っています。
アミノ酸の代謝
アミノ酸とは、体内でタンパク質の材料やエネルギー源として利用される物質です。
タンパク質合成に必要なアミノ酸は20種類ありますが、そのうちのひとつ「メチオニン」を代謝する際に「ホモシステイン」という悪玉アミノ酸が発生します。
ホモシステインが血液中で増えすぎると、血管の内側の細胞を傷つけて動脈硬化の危険率を高めてしまいます。
葉酸は、そのホモシステインの代謝に関わっています。葉酸を十分に摂取することで、血液中のホモシステインの量が減り、動脈硬化を予防することができます。
葉酸の1日に必要な摂取量
繰り返しになりますが、葉酸は体内でで非常に大切な役割を担っており、男女問わず摂り続けることが大切な栄養素です。
葉酸を1日にどのくらい摂取すれば良いのかの基準として、厚生労働省により「1日摂取推奨量」というものが定められています。
簡単にまとめると以下のとおりです。
対象 | 葉酸の1日摂取推奨量 |
---|---|
成人〜高齢者 | 240µg |
妊娠初期 | 食事から240µg+健康補助食品から400μg |
妊娠中期〜妊娠後期 | 480µg |
授乳中 | 340µg |
これを見てわかるとおり、厚生労働省が推奨している一般的な葉酸摂取推奨量は、1日あたり240µgです。
妊娠中は、胎児の成長に伴い多くの葉酸が必要になるため、より多くの葉酸を摂るように推奨されています。
特に妊活中と妊娠初期の女性は、食事からの摂取に加えてサプリメントなど健康補助食品から400μg/日を摂るように推奨されています。胎児の神経管閉鎖障害予防のために、多めに摂取するべきということですね。
また、妊娠中期から後期にかけても葉酸の分解や排泄が促進されると言われており、成人の推奨量に240µgを追加した480µgの摂取が望ましいとされています。
葉酸は、必要以上に摂りすぎると胎児や母体に健康障害が起こる可能性があります。医師の指示がある場合を除いては、1日の葉酸摂取量が1mgを越えないようにしましょう。
葉酸を十分摂取することで得られる効果
葉酸は水溶性であり熱に弱いという弱点があるため、加熱など調理することによって食品に含まれる量が大幅に減ってしまいます。
毎日十分な葉酸を摂取するためには、サプリメントを利用するのがおすすめです。
葉酸をしっかりと摂ることで期待できる効果は、以下の点です。
- 胎児の神経管閉鎖障害リスクを軽減できる
- 妊娠中の貧血を予防できる
- 新陳代謝を促進する
- 血管系の病気を予防できる
簡単に説明していきます。
胎児の神経管閉鎖障害リスクを軽減する
これまで見てきたように、妊活中や妊娠中に葉酸を勧められる理由のひとつが、胎児の胎児の神経管閉鎖障害リスクの軽減です。
神経管閉鎖障害の原因としては葉酸不足による栄養学的因子、環境因子、遺伝的因子などが関わっていると言われています。
葉酸を摂取することで、栄養学的因子のリスクが軽減できます。
また、神経管閉鎖障害予防のために推奨される葉酸の摂取時期は、妊娠1ヵ月以上前から妊娠3ヵ月までとされています。
妊娠中の貧血を予防する
妊娠中はつわりで思うように食べられなかったり、血液量が増加することにより貧血になりやすくなってしまいます。
葉酸は赤血球を作り出す働きにも関わるため、ビタミンB12と一緒に十分な量を摂取することで、貧血を予防する効果が期待できます。
貧血予防には鉄分の摂取も大切です。市販の葉酸サプリには、鉄分も一緒に摂取できるものが多くあります。サプリを選ぶ際は葉酸以外に含まれている成分も確認してみてください。
新陳代謝を促進する
葉酸は細胞の再生や代謝などに関わりがあることから、十分な量を摂取していると新陳代謝の促進も期待できます。
新陳代謝が促進されると、たとえば以下のようなメリットがあります。
- 食品からの栄養の吸収力を高める
- 肌のターンオーバーを促し、傷や肌荒れの回復を回復する
- 糖質や脂質をスムーズに代謝する
葉酸を摂取し続けて代謝を高めれば、健康的な体を作ることができます。
血管系の病気を予防できる
葉酸には、動脈硬化の原因の一つであるホモシステインを減らす働きがあります。
動脈硬化とは、動脈の血管が硬くなって弾力性が失われた状態のことです
動脈硬化になると、血管や心臓に大きな負担がかかってしまいます。心臓の機能が低下したり、血管が破れて生命にもかかわる大きな病気を発症したりするリスクが高くなります。
葉酸をしっかりと摂ることで、これらの血管系の病気のリスクを軽減できることがわかっています。
葉酸サプリを飲む期間は?
葉酸サプリはいつからいつまで飲むのが良いのでしょうか。
結論から言うと、「妊娠を望む1カ月前から、授乳期間が終わるまで」です。
厚生労働省では、妊娠を望む1カ月前から摂取すべきであると推奨されています。つまり、飲み始める時期は「赤ちゃんが欲しいと思った時」です。
また、先ほど確認したように、「日本人の食事摂取基準(2020 年版)」では、以下の時期の葉酸について、食事とは別にどれだけ付加して摂取すべきかが設定されていました。
- 妊活中
- 妊娠初期、中期、後期
- 授乳期
以上を踏まえると、妊娠を望む1カ月前から、授乳期間が終わるまで葉酸サプリを摂取することが望ましいということになります。
葉酸サプリの選びかたのポイントとは
ではここから、葉酸サプリの選び方のポイントを紹介します。
葉酸サプリを選ぶ際には、以下の点をチェックするようにしましょう。
- 葉酸の配合量
- 葉酸以外の成分の配合の有無
- 安全性
- 飲みやすさ
- 価格
それぞれのポイントについて簡単に説明します。
葉酸の配合量
葉酸の推奨摂取量は妊活中、妊娠の時期、授乳期によって推奨量が変わってきます。それぞれの時期に必要な葉酸の量を満たすよう選びましょう。
たとえば妊活中・妊娠初期の女性は食事に加えて一日に400μgの葉酸を摂取することが推奨されています。
葉酸が1日400μg摂取できるものを選ばなくてはなりません。
また、体内での吸収率の高い「モノグルタミン酸葉酸」が配合されているのかどうか、成分をチェックすることも大切です。
その他の成分の配合の有無
葉酸サプリの多くは、葉酸以外に鉄やカルシウム、ビタミンなど複数の栄養素が配合されています。
妊娠中に葉酸以外に重要になる栄養素の例を挙げると、以下のようなものがあります。
- ビタミンB6
- ビタミンB12
- 亜鉛
- 鉄
- カルシウム
- マグネシウム など
配合されている成分は、それぞれのサプリのこだわりのある部分でもあるので、確認するようにしましょう。
飲みやすさ
サプリメントの飲みやすさも重要です。
妊娠中は、つわりにより錠剤を口に入れにくかったり、匂いに敏感になったりする可能性があるからです。
錠剤の形状や大きさ、においや味が気にならないものを選ぶと継続しやすいです。
- 錠剤が小さい
- 匂いや味がない
- 一回に飲む粒数が少ない
上記の点が飲みやすさのポイントです。最初はお試しサイズや1袋だけ試してみるなどの方法で確認しておくことをおすすめします。
価格
葉酸は、妊活時から授乳期まで長い間必要となる栄養素です。
そのため、サプリメントの価格の面でも、続けやすいことが大切です。
葉酸サプリの中には、定期便の割引サービスがあるものもあります。活用してみるのも良いでしょう。
安全性
サプリメントの安全性を確認する指標のひとつとして、「GMP認定工場」で製造されているどうかというものがあります。
GMP認定工場とは、原料の仕入れから製造、梱包、出荷まで、一定基準の安全性が保たれていることが認められた工場のことです。
それ以外にも、添加物の有無や材料の原産国や加工国について公表している葉酸サプリもあります。
これらの情報は、パッケージやサプリの公式サイトで確認することができます。
大切な時期に使用するサプリだからこそ、納得のいく品質のものを選ぶようにしましょう。
まとめ:サプリをうまく活用して健康的な生活を送ろう
今回は、葉酸の基礎知識からその効果、サプリメントの選びかたについて解説しました。
「サプリを摂っているから大丈夫」と安心するのではなく、しっかりと納得した上で生活に取り入れてくださいね。
また、葉酸だけでなく、その他の栄養もバランスよくとれるよう工夫することも大切です。