はちみつには、風邪の予防やダイエット効果など、体にうれしい作用があるのはご存知の方も多いでしょう。
体に良いとは分かっていても、なんとなくスーパーで買ったはちみつをパンに乗せたり、料理に入れたりしていませんか?
今回は、はちみつの基礎知識や摂取することでの効果、選びかたを解説します。
これを読んではちみつの性質を知ることで、より効果的な選びかたや使いかたを生活に取り入れていただければ幸いです。
はちみつの基礎知識
はちみつはその名の通り、ミツバチが作った蜜のことです。
ミツバチは花の蜜を集めて巣に戻り、巣の中にいる仲間に蜜を口移しで分け与えます。巣の中にいるハチの体内で酵素分解して巣に詰められ、水分を蒸発させて熟成させたものがはちみつです。
ミツバチが採取した花の種類によって、色や香り、味に違いが出てきます。
はちみつは人類最古の甘味料とされ、その起源はエジプトであると言われています。
はちみつの種類
はちみつは、「公正競争規約」によって、消費者が商品を安心して選ぶことができるように品質が定められています。
公正競争規約によると、はちみつは花の種類に関わらず以下の3種類に分けられます。
- 純粋はちみつ
- 加糖はちみつ
- 精製はちみつ
簡単に説明していきます。
- 純粋はちみつ
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添加や成分調整を一切行っておらず、はちみつ以外のものが混入されていないはちみつのことです。
無添加、無調整のはちみつだけに「純粋」または「Pure」の文言を使用することができると決まっています。栄養豊富ではちみつ本来の香りや味を楽しめます。 - 精製はちみつ
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「はちみつから匂い、色等を取り除いたものを精製はちみつとする」と定義づけられています。純粋はちみつに加熱濃縮処理をし、そのあとに色や香りを調整していることが多いです。栄養分が失われ、はちみつ特有の色やにおいなどが人工的に調整されたものになっています。
- 加糖はちみつ
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はちみつに水あめ、果糖など糖分を加えて加工したはちみつのことです。
日本では、糖類を40%未満まで添加したはちみつは「加糖はちみつ」と呼び、流通が認められています。しかし、加糖は国際基準では一切認められていません。
この3種類の中で、加工がされていないものは「純粋はちみつ」のみです。はちみつの効果を期待して摂取する場合は、迷わず純粋はちみつを選びましょう。
はちみつに含まれる栄養素
はちみつの成分としは、70%〜90%はブドウ糖と果糖、残りのほとんどは水分からできています。
はちみつに含まれる糖類はミツバチが花の蜜を体内の酵素で分解した単糖類であり、摂取した際に体内での消化吸収がしやすく、ダイレクトに体のエネルギー源になります。
さらに、はちみつにはビタミン、ミネラル、アミノ酸、酵素、ポリフェノールなど150種類以上の栄養成分がバランスよく含まれています。
腸内環境を整えるグルコン酸やオリゴ糖、抗酸化・抗炎症作用でメタボリックシンドロームを軽減するポリフェノールも含まれています。
このように、はちみつは非常に栄養価の高い健康食品です。そのため「パーフェクトフード」とも言われます。
はちみつは低カロリーな甘味料
はちみつは低カロリーな甘味料です。
はちみつのカロリーは100gあたり329kcalです。上白糖を同じ100gあたりで見ると391kcalとなり、同じ量で見ても砂糖よりカロリーが低いです。
また、はちみつは砂糖よりも1.3倍甘味度が強いため、砂糖が大さじ3杯に対し、ハチミツが大さじ1杯で同じ甘さになります。
砂糖と比べると低カロリーで健康的な甘味料といえます。
はちみつを食べると期待できる効果
はちみつには多くの栄養がつまっており、摂取することでたくさんの体に嬉しい効果があります。
一部ではありますが、はちみつによって期待できる効果を次に挙げました。
- 疲労回復効果
- 高血圧の予防
- 炎症を抑える
- ダイエット
- 脳の活性化
- 美肌効果
ひとつずつ説明していきます。
疲労回復効果
はちみつには、疲労回復効果があります。
繰り返しになりますが、はちみつの主成分はぶどう糖と果糖であり、構造が単純な単糖類なので、体内に入ると胃腸に負担をかけずスピーディーに栄養分として取り込まれます。
このような特徴から、はちみつを摂取すれば非常に効率良く栄養を吸収することができます。
疲れがたまっている時や体が弱っているとき、スポーツなどの運動後の疲労などに対して、効果的に回復できます。
高血圧の予防
はちみつは、高血圧の予防にも効果的です。
はちみつにはミネラル類が豊富に含まれています。その中でも、特にカリウムが多く含有されています。
食べ物に含まれるカリウムは「自然の降圧薬」と言われることもあり、適切な量の摂取で体の余分な塩分を排出して、血圧を下げる効果があることがわかっています。
はちみつを毎日の健康習慣として摂取すれば高血圧の予防につながります。
炎症を抑える
喉の風邪をひいた時にはちみつを摂ると良いという話は有名ですね。
はちみつには、抗菌・殺菌作用があります。
はちみつを適量摂取することで喉の痛みを和らげ、炎症を抑えてくれます。咳止めや痰の切れを良くしてくれるといった効能もあるそうです。
また、はちみつを口に含むと殺菌作用で口内炎や口臭、虫歯の予防にも繋がります。
ダイエット
はちみつは、他の甘味料に比べて、カロリー、糖質、GI値ともに低く、健康的な甘味料です。
砂糖の3分の1の量で同等の甘みが感じられるので、砂糖の代わりに使用すれば糖分の摂取量を抑えることができます。
また、はちみつに含まれるアミノ酸の中には、脂肪燃焼を促すものがあります。アミノ酸を摂ると代謝が上がり、効率的に脂肪を燃焼することが可能です。
以上のことから、はちみつを取り入れることでダイエット効果が期待できます。
脳の活性化
代表的な栄養成分であるブドウ糖や果糖・ビタミン類・ミネラルは、摂取すると素早く吸収されるため、脳の活性化にや成長に効果的です。
また、更年期に関する論文で、1日小さじ3杯の「トアランはちみつ」を摂取すると記憶力が向上したという研究結果もあります。
トアランはちみつとは、マレーシアに生息するオオミツバチのはちみつで、栄養価が高いはちみつです。
美肌効果
はちみつには、ビタミンC・B2・B6やポリフェノールなどが豊富に含まれています。
ビタミン類は、皮膚の代謝を促進したり肌を整える効果が期待できます。
ポリフェノールには、シミやそばかすの原因となるメラニンの生成を抑制する抗酸化作用があります。
また、ハチミツには整腸作用があることから、慢性的な便秘や下痢などといった症状の緩和や改善といった効能もあり、腸内環境を整えることで肌のトラブルの改善が期待できます。
このように、はちみつを毎日適量摂取することで体の中から美肌が目指せます。
はちみつの効果的な食べかたは?
はちみつの健康効果を最大限生かす効果的な食べ方は、「できるだけそのままに近い形で摂取する」ことです。
はちみつは熱にとても弱い食品で、熱にされされると栄養素の多くを失ってしまう性質があるからです。
- そのままスプーンですくって毎朝摂取
- ヨーグルトに入れる
- パンに塗る
- ホットケーキにかける
- はちみつ漬けを作る
上記のように、はちみつを加熱せずそのまま食べたり、かけるだけの食べかたがおすすめです。
また、はちみつに含まれる栄養素のうち唯一不足いているのがビタミンCだと言われています。はちみつでレモンを漬ければ、ビタミンCを補いながらよりバランス良く栄養素を摂取することができます。
はちみつを食べるときの注意点
はちみつを取り扱う上で知っておきたい注意点があります。以下の点に注意しましょう。
- 1歳未満の赤ちゃんは食べてはいけない
- 金属に触れると変質する
- 加熱に弱い
詳しく解説していきます。
1歳未満の赤ちゃんは食べてはいけない
はちみつには、「ボツリヌス菌」が混入している可能性があります。ボツリヌス菌とは、土壌中などに広く存在している細菌のことです。
赤ちゃんはまだ腸内環境が未熟で整っていないため、ボツリヌス菌を食べてしまうと腸内で増えて毒素を出し始めます。
その結果、便秘、ほ乳力の低下、元気がなくなる、首のすわりが悪くなる、といった症状を引き起こす「乳児ボツリヌス症」を起こすことがあります。
乳児ボツリヌス症は、適切な治療により治癒しますが、まれに亡くなることもある恐ろしい病気です。
ボツリヌス菌は熱に強いため、普通に加熱しただけでは残ってしまいます。お菓子・パンなど、はちみつを使った食品にも注意が必要です。
なお、1歳以上の腸内では、ボツリヌス菌が他の腸内細菌との競争に負けてしまうため、はちみつを摂取しても通常は何も起こりません。
参考:厚生労働省ホームページ(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000161461.html)
金属に触れると変質する
はちみつは、アルミニウムや銀などの一部の金属が触れると成分が変化します。
はちみつをすくって容器から出す際には、スプーンの素材に注意しましょう。
- ステンレス
- 木製
- 陶製
上記の素材のスプーンを使えば、はちみつ本来の栄養素をそのまま美味しく摂り入れることができます。
また、丸い形に溝がついている「ハニーディッパー」を使うのもおすすめです。
ハニーディッパーは、はちみつを瓶から出しやすく、液ダレしにくい構造になっているはちみつをすくうために作られたアイテムです。ハニーディッパーを購入する場合は、垂れにくさやすくいやすさ、洗いやすさを考えて選ぶようにしてくださいね。
加熱に弱い
はちみつは、加熱に弱い食品です。
加熱することで、栄養性分や酵素が失われてしまうからです。
はちみつには、加熱することで減少してしまう可能性があるビタミンが含まれています。ビタミンCやビタミンB1、パントテン酸、葉酸などが熱に弱いと言われています。
また、はちみつの抗菌作用に重要なグルコースオキシターゼやグルコン酸、過酸化水素といった酵素も加熱によって減少します。
料理にはちみつを使ったり、熱いコーヒーや紅茶などに入れる場合は、60度を超えないよう、少し冷めてから加えるようにしましょう。
食べる以外のはちみつの使いかた
栄養満点、健康効果が素晴らしいはちみつですが、使い方は食べるだけではありません。
前田京子さんの著書『ひとさじのはちみつ 自然がくれた家庭医薬品の知恵』には、はちみつの魅力とともに食べる以外のさまざまな活用法が記されています。
前田京子さんは、手づくり石けんやボディケアブームの先駆けとなったベストセラー『お風呂の愉しみ』『オリーブ石けん、マルセイユ石けんを作る』を書かれた方です。
本の中に紹介されている活用法を一部紹介します。
- 化粧水
- 入浴剤
- 虫歯や歯周病の予防の歯磨き粉
- 目薬
- 非常食・保存食
はちみつには保水作用があり、化粧水や入浴剤、リップクリームとして使用することで、肌にも嬉しい効果があります。
甘いので歯磨きに使うと虫歯になりそうな気がしますが、実はその逆で、抗菌作用により虫歯予防にもなるそうです。
筆者はこの本を読んでから数年間、家族で歯磨き後にはちみつを1さじなめるようにしています。誰も虫歯になっていません。
栄養価が高く、常温で長期間保存ができるはちみつは、災害時の非常食、保存食としても活躍します。
こちらの本には、それ以外にも具体的なはちみつの効果や活用法について書かれています。気になる方はぜひ、読んでみてくださいね。
はちみつの選びかた
ここまでのことを踏まえると、蜂蜜を選ぶときは「純粋はちみつで加熱処理のされていないもの」を選ぶということが非常に大切です。
しかし、はちみつ類の表示に関する公正競争規約では、純粋はちみつは「精製はちみつを使用せず、かつ添加物を一切加えないもの」と定義しており、加熱処理に関しては規定されていません。
つまり、熱加工をしているはちみつも「純粋はちみつ」と呼ぶことができてしまうです。
栄養価が失われてしまうのに加熱処理をする理由は、はちみつの生産効率が上げるためです。
本来はちみつは、ミツバチが集めた蜜を巣に持ち帰り、巣の中で羽を使って水分を飛ばし糖度を高めます。しかし、ミツバチによる完熟を待たずにはちみつを採取し、加熱して強制的に水分を飛ばし糖度を高めた方が生産性が上がるため、加熱した純粋はちみつが多く出回っているのです。
はちみつそのものを見て加熱されているかどうか見極めるのは難しいですが、はちみつを購入する際に以下の3点を考慮すれば、質の良いはちみつを選びやすくなります。
- 信頼できる生産者や販売店から購入する
- 国産のはちみつを選ぶ
- 安価すぎるはちみつは選ばない
購入の際にはこれらに気を付けて、安心できるお店のはちみつを選びましょう。
まとめ:ひとさじのはちみつを大切にいただこう
この記事では、はちみつの基礎知識からはちみつを食べることで得られる効果、そしてちょっと変わったはちみつの使い方を紹介しました。
一匹のミツバチが一生のうちに集めるはちみつの量は、わずかティースプーン1杯分といわれています。
ぜひ、厳選したはちみつを大切に味わってみてくださいね。